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2006年6月29日 (木)

散策~寺社編:大円寺③~

引き続き、大円寺を紹介します。
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「大円寺」は行人坂の坂の途中にありますが、坂の下(目黒雅叙園辺り)にも別のお寺があったことはあまり知られていません。
寺の名は「明王院」といい、浄土宗のお寺です。開山・創建はわからなかったのですが、初期「江戸名所図会」の「夕日岡行人坂」という挿絵に、行人坂、大円寺(行人坂火事が起こった後に描かれたため、敷地に五百羅漢があるだけです)とともに、在りし日の「明王院」も描かれています。

「明王院」には後に紹介する「西運」というお坊さんが居た寺と伝えられ、「西運」によって行人坂に敷石を敷かれたり、目黒川に「太鼓橋」という橋を架けられたそうです。1880年(明治13年)ごろに廃寺となってしまい、お寺にあった「本尊」や「西運」の位牌(いはい)、「お七地蔵」、「供養塔」などは大円寺に移設され、今でも本堂の右脇に安置されています。

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↑本堂の右側にある「阿弥陀堂」。安置されている阿弥陀三尊は、もとは「明王院」の本尊だったそうです。中には西運上人の木像もあるそうです。

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↑「お七地蔵」と「西運」の姿が描かれた石碑。
 新しいお地蔵さんですが、本来の「お七地蔵」と伝えられている地蔵菩薩像は、阿弥陀堂に安置されています。

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↑写真が小さくてうっすらとしか見えませんが、「西運」の行(?)の姿が描かれています。

となりあう「お七地蔵」と「西運」の石碑。二人は、後に「八百屋お七」として芝居や文学で悲恋として語られている当事者だと伝えれています。

江戸時代には、「行人坂の火事(1772年)」などの「江戸三大大火」を始めに、多くの火災が発生しました。火災のたびに多くの家屋の焼失や犠牲者がでたそうです。本郷の八百屋の娘の「お七」も、1682年(天和2年)に「天和の大火」と呼ばれる火事によって家を焼かれてしまいます。駒込のお寺(と言われていますがどこのお寺かは諸説あり)にしばらく身を寄せる事になったのですが、そこで出会った寺小姓の「吉三郎」に恋してしまったそうです。

家の再建のために寺を離れることになった後も、吉三郎の事が忘れられず、恋に焦がれたお七はもう一度火事が起きれば再び会えるかもしれないとの思いから、再建した自宅を放火してしまいます。

恋する16歳のお七の想いは、やがては消すことができない程の大きな炎へとなってしまったのでしょうか。
この時代、火付け(放火)は最も重い大罪でした。奉行も慈悲の心はあったらしくで、成人(16歳)ではなく15歳の少女として、なんとか極刑を免れるように働きかけてそうですが、お七は16歳と正直に答えたそうです。

すべてが終わり、抜け殻となってしまったのか。その後、お七は江戸市中引き廻しの上、鈴が森で「火あぶりの刑」となったそうです。

この実話をもとに井原西鶴が「好色五人女」に登場させて以降この事件は一躍有名となり、色々な作者が取り上げたことにより、浄瑠璃や歌舞伎としても様々な形で上演されるようになりました。ちなみに、現在、八百屋お七のお墓は天台宗 南縁山 圓乗寺(東京都文京区白山1-34-9)にあるそうです。

お七の死後「吉三郎」は僧になり、全国を行脚した後、名を「西運」改めて明王院に身をよせます。お七の菩提をとむらうため、目黒不動と浅草の観音堂(往復で40km程あるそうです)を一日おきに往復したそうです。手に持った鉦(かね)を鳴らし、念仏を唱えながら一万日の行を54年かけて成し遂げました。長きに渡って行った行により、江戸市民より多くの浄財を受け、その浄財を元に「明王院」に「念仏堂」を建てることや、行人坂の整備、橋を架けるなど、地域への貢献を多くおこなったそうです。

「西運」にとって「お七」がどのような存在だったのかは定かではありません。一説には、お七が恋したのは別の人物(佐兵衛と呼び、後に江戸六地蔵を造る働きかけをした人)であり、「吉三郎」はお七に放火をそそのかした人という説もあるようです。
諸説はどうあれ、「西運」によって「お七」の供養が行われた事、お七が西運の夢枕に表れて成仏した事を報告した事、それを受けて「お七地蔵」を造ったことは、単なる悲劇として誇張したり片付ける必要がない事を今の私たちに伝えているのかもしれません。

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↑「行人坂敷石造道供養塔」。施主として「西運」の名前と1703年(元禄16年)紀念と刻まれているそうです(横の案内板より、石碑の文字は大分薄れており、一見してそれとわかりませんでした)。

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↑「太鼓橋」に使用された石材。

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